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3月 22, 2024 by Terutaka Kawamura

2023年欧州新車販売台数総括

欧州の新車販売台数、パンデミック後最高を記録

  • 電気自動車の販売台数が初めて200万台を突破
  • 中国ブランドのマーケットシェアが2.6%に拡大
  • 2023年にはテスラとMGが販売を最も伸ばした

欧州の自動車市場は昨年、新車販売台数が新型コロナウイルスの世界的大流行以降で最高水準に達し、注目すべき節目を迎えた。ピュアEVBEV)に対する旺盛な需要と新規参入企業の影響力の高まりが、欧州大陸の自動車市場に大きな変化をもたらし、2023年の欧州28カ国の新車販売台数は前年比14%増の1,2792,151*1 となった。

 

「欧州の自動車市場は正常化しつつあるようだ。サプライチェーンの問題はほぼ収束し、消費者は新車を長く待つことに慣れてきた。にもかかわらず、2019年に記録された1,500万台を超える台数は見込めそうにない。自動車購入はより高価になり、所有に対する意識は変化し続けている」と、JATO DynamicsのグローバルアナリストであるFelipe Munozはコメントした。

成長をけん引したのは、英国、フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、ポルトガル、クロアチア、キプロスなどの市場における旺盛な新車需要であった。しかし、依然として欧州最大の市場であるドイツでは、高金利の影響が見られた。「一部の国は、他の国よりも影響を受けた。例えば、ドイツでは、輸出の減少や経済全体の健全性に対する懸念から、成長率が低下した」とMunozは述べた。

BEVが成長をけん引

2023年の欧州新車市場の成長の大部分をけん引したのはBEVで、販売台数は2011,209台でマーケットシェア全体の15.7%を占めた。これはディーゼル車の2049,157台にほぼ匹敵し、このカテゴリーとしては過去最高を記録している。この結果、欧州は中国(約500万台)に続き、米国(107万台)を上回る世界第2位のBEV市場の地位を固めた。

「11月に成長が停滞し、12月に急落したものの、インセンティブは欧州全域でBEVの導入を支え続けている。しかし、登録タイプ別のデータを見ると、インセンティブは現在、法人、フリート、レンタルにしかアピールしていないことが明らかになった」とMunozはコメントした。

 

27か国*2 のデータによると、個人購入の4%増に対し、フリートや企業によるBEV販売は51%増加した。注目すべきは、個人へのBEV販売は全体の39%に過ぎず、2022年から9%ポイント減少したことである。

 

「個人購入者の関心の低さは、業界が克服すべき大きなハードルである。自動車メーカーにとって、個人向け販売は最も収益性が高い傾向にあるため、このタイプの顧客を引きつけるためにもっと努力することが不可欠だ」とMunozは強調した。

 

 

 

 

 

 

 

フィンランド、デンマーク、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグでは、BEV のマーケットシェアが最も顕著に拡大し、これらの市場ではすでに強力な基盤から上昇した。スロベニア(20225.0%→20239.0%)、エストニア(3.4%→6.8%)、ラトビア(6.6%→9.0%)など、BEVのマーケットシェアが小さい市場でも力強い成長が記録された。一方、クロアチアの BEV シェアは 2022 年の 3.2%から昨年は 2.9%に低下した。英国市場は安定を維持し、2022 年の 16.6%から 2023 年には 16.5%へとわずかに低下したが、イタリアでは 0.5 %ポイントの微増を記録している。

 

地域別では、スカンジナビアが市場全体の 46%を占め、北欧・中欧(19%)、南欧(9.4%)、東欧(5.3%)と続く。「BEVへのシフトは4つの異なるスピードで進んでいる」とMunozは強調した。

 

 

 

 

 

 

 

 

中国ブランドとテスラは破壊的な変革者となった

2023年の欧州の自動車市場におけるもう一つの大きな変化は、中国自動車ブランドの継続的な浸透である。昨年は新たに7つのブランドが市場に参入し、2022年にすでに販売されていた23ブランドに加わった。全体として、中国ブランドは2023年に前年比79%増の321,918台を販売した。「2023年の中国ブランドのシェアは、2022年の1.7%から2.6%と過去最高を記録したが、侵略という主張は誇張されすぎている」とMunozは述べた。

 

欧州で販売されている30の中国ブランドのうち、1,000台以上を販売したのはわずか8ブランドで、MGが全体の72%を占めた。英国で設立され、現在は中国の上海汽車集団(SAIC Group)の傘下にあるこのブランドは、販売台数が113,182台から231,818台へと2倍以上に増加し、マーケットシェアは1.81%に達した。MGはクプラ(Cupra)、スズキ、ミニ、マツダを上回り、メーカー別ランキングではスペインのセアト(Seat)との差を14千台以下に縮めた。

英国はMGにとって欧州最大の市場であり続け、販売台数全体の35%を占めたが、フランス(165%増)、イタリア(311%増)、スペイン(321%増)では急成長を遂げた。2023年、MGは英国で11位、フランスで18位、スペインで15位、イタリアで21位のブランドとなった。MG ZSは欧州で10番目に売れたB-SUVとなり、MG 4は欧州で4番目に販売台数の多い電気自動車となった。「MGは、中国製の競争力のある魅力的な製品を提供しながらも、英国のレガシーブランドとしての地位を活かしている」とMunozは述べた。

 

一方、テスラはブランド別ランキングで驚異的な上昇を続けている。2022年に18位のブランドであったテスラは、ニッサンとボルボを抜いて16位に浮上した。2023年の販売台数は前年比56%増の362,300台で、シェアは2022年の2.06%から2.83%へと過去最高を更新している。BEVセグメントでは、テスラが最大のシェアを獲得し、SAICMG)、BMWグループ、トヨタ、メルセデス・ベンツが続いた。対照的に、ルノー・グループ、ステランティス、現代自動車、ニッサン、フォードは、BEVセグメントでのシェアを大きく失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テスラ モデルYは、2023年に欧州で最も販売台数の多いモデルとなり、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、オランダ、ベルギー、スイス、フィンランドなどの市場でも販売首位だった。欧州ブランド以外のモデルと電気自動車が首位となったのは、共に初めてのことである。「テスラは、モデルYの人気急上昇と全モデルの値下げにより、欧州進出以来最大のマーケットシェアを記録した。テスラは、適切な時期に適切な場所で適切な製品を提供している」とMunozはコメントした。

好調な業績を誇るフォルクスワーゲン・グループ

ドイツのフォルクスワーゲン・グループは、2022年の24.7%から25.8%に上昇し、2023年に欧州最大のマーケットシェアを獲得した。アウディ、シュコダ(Skoda)、セアト(Seat)、クプラ(Cupra)が昨年シェアを伸ばしたが、これは強力なEVラインアップと、アウディ A4A1Q2、セアト イビサ(Seat Ibiza)といった旧モデルの魅力的なお買い得価格の結果である。シュコダ オクタビア(Skoda Octavia)とカミック(Kamiq)、アウディ Q4、セアト アテカ(Seat Ateca)、クプラ レオン(Cupra Leon)も好調な結果を残した。フォルクスワーゲン ゴルフの販売台数は、全体的なシェア拡大にもかかわらず4%増にとどまり、T-Cross5%減となった。

 

フォルクスワーゲン・グループの電気自動車ラインアップは2023年に好調で、BEVランキングではID.43位、ID.37位となった。しかし、これらのモデルは、テスラ モデル Y MG 4 などの直接の競合車種には及ばなかった。モデルYは、平均小売価格が15%高いにもかかわらず、ID.4の約3倍の販売台数を記録した。MG 4も、ドイツでの平均小売価格がID.3より5%高いが、ID.38,800台上回った。

その他、ビターラ(Vitara)、スイフト、イグニス、S-Crossの個人への販売台数が増加したスズキも大きく販売を伸ばした。ルノー・グループは、42%増のクリオ(ルーテシア)と60%増のダチア ジョガー(Dacia Jogger)が好調で、ルノー オーストラル(Austral)も好調なスタートを切った。

 

フォルクスワーゲン・グループとは対照的に、ステランティスは2023年に欧州で最大のマーケットシェア低下を記録し、16.6%に低下した。これは、2021年に20.3%のシェアを獲得して以来、2年連続のマイナスである。「2021年にフィアット・クライスラー・オートモービルズ(Fiat Chrysler Automobiles)とグループPSAPSA Group)が合併してステランティスが誕生したことは、収益性にはプラスであったが、販売台数とマーケットシェアにはマイナスであった。ステランティスは中国からの新規参入企業に対して脆弱で、4つの主要ブランドは昨年欧州市場で失速した」とMunozは強調した。

モデル別ランキング

2022年に発売されていて、2023年に最も好調だったモデルは、テスラ モデルY、ルノー クリオ(ルーテシア)、MG ZS、シュコダ オクタビア(Skoda Octavia)、トヨタ カローラ、ダチア ジョガー(Dacia Jogger)、ニッサン ジューク、トヨタ ヤリスクロス、BMW i4、セアト イビサ(Seat Ibiza)、アウディ Q4であった。最近発売されたモデル(または2022年までは発売されていなかったモデル)では、ルノー オーストラル(Austral)、MG 4BMW iX1、ジープ アベンジャー(Avenger)、ニッサン エクストレイル(X-Trail)、オペル/ボクスホール アストラ(Opel/Vauxhall Astra)、プジョー 408、アルファロメオ トナーレ、マツダ CX-60が好調な初動を記録した。

 

最もシェアを落としたモデルは、トヨタ ヤリス、プジョー 208、フィアット/アバルト 500、ニッサン マイクラ(2023年生産終了)、フォード エコスポーツ(Ecosport)、オペル/ボクスホール クロスランド(Opel/Vauxhall Crossland)、トヨタ RAV4、ルノー ゾエ(Zoe)、プジョー 3008、ルノー カジャー(2023年生産終了)であった。

 

注記:

* 1 オーストリア、ベルギー、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フランス、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、アイルランド、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ノルウェー、オランダ、ポルトガル、ポーランド、ルーマニア、スウェーデン、スイス、スペイン、スロバキア、スロベニア、英国。

 

*2 ハンガリーを除く。

 

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