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3月 10, 2020 by Terutaka Kawamura

2019年欧州二酸化炭素排出量レポート

新車の二酸化炭素排出量の平均値は

欧州で2014年以来の最高値に

  • 2019年の販売台数を加味した二酸化炭素排出量(NEDCモード)の平均値は、3年連続して上昇
  • 主要な自動車メーカーの大部分で、二酸化炭素排出量が増加した
  • ピュアEVBEV)の販売割合はいまだ限定的で、排出ガス増加傾向を打ち消すには至っていない

自動車業界は、今年も数多くの大きな挑戦と向き合っている。2019年は、欧州自動車市場が控えめな成長を記録しただけでなく、二酸化炭素排出量の増加傾向も継続した年であった。新しい規制は、排出量を削減するために計画されたにもかかわらず、である。

欧州23カ国乗用車による二酸化炭素排出量の加重平均値 2007年から2019年の推移

昨年、欧州市場の販売台数を加味した二酸化炭素排出量の平均値は、2014年以来の最も高い水準となった。JATO Dynamicsのデータによれば、欧州23カ国の平均値は、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)モードで121.8 g/kmとなっており、3年連続して上昇している。JATOのグローバルアナリストであるFelipe Munozは「予想された通り、ディーゼル車の販売台数減と、SUVの販売台数増が二酸化炭素排出量に影響を与えた。中期的には、この傾向に変化があるものとは期待できない。この結果は、目標とする排出量を達成するために、業界が電気自動車(ピュアEV)をもっと速いペースで導入する必要があるということを、より強く表しているのだ」と述べた。

昨年の平均値は2018年比で1.3 g/km増であったが、実際のところ、2017年から2018年にかけて2.4 g/km増であったことと比較すれば減少している。電気自動車(BEV)モデルが増えていることは、排出量削減に良い影響を与えているにもかかわらず、消費者のディーゼル車離れが悪影響を残し、打ち消すことはできなかった。Munozは「電動車の平均排出量は63.2 g/kmであり、ディーゼル車やガソリン車のほぼ半分となっている。問題は、ピュアEVが販売台数に占める割合はたったの6%しかなく、排出水準に良い影響を与えるためにはまだ十分でないということだ」と続ける。

 

NEDCモードでの二酸化炭素排出量の加重平均値 国別ランキング 2019年

さらには、欧州の主要5カ国の内4カ国で、2018年比で平均値上昇を記録している。ドイツ、イギリス、イタリア、スペインで上昇しており、ドイツの0.8 g/km増に始まり、イタリアに至っては3.0 g/km増となった。ディーゼル燃料の利用に関しての考え方や規制に変化があったことにより、意図せぬ結果として、より二酸化炭素排出量の多い車を運転するようになってしまったことが、ある程度は影響しているだろう。フランスのみが唯一、2018年の112.0 g/kmから、111.1 g/kmへと改善を見せた国である。ただし、2016年、2017年の数値からは悪化してしまっているが。

 

 

 

 

 

ピュアEVBEV)は、フランスで2%のマーケットシェアを握っており、欧州主要5カ国の中では最も高い割合である。そのためフランスは、いかに電気自動車によって排出水準に顕著な影響を与えることができるか、という点において他国に先陣を切っている。もっとも、ディーゼル車やガソリン車の普及具合から見れば遅れているが。フランスは、ルノー・ゾエ(Zoe)のように、より手に入れやすい価格帯の車両を導入することで市場拡大に成功した(近いうちには、プジョー e-208の登場も予定されている)。Munozは「ドイツ勢も、イタリア勢も、サブコンパクト・セグメントへピュアEVを導入していない。もし導入されれば、消費者動向に大きな違いを生むことだろう」と述べた。

 

その他、排出水準に大きな改善が見られた国は、スウェーデンとオランダである。特にオランダは、前年より5.9 g/km減らし、欧州連合の中で最も排出量が少ない国となった*1。改善の理由は、ピュアEVの販売台数がディーゼル車に対して増えたことである。2018年は、オランダで販売される電気自動車1台に対し、ディーゼル車は2.3台であったが、その1年後には、ディーゼル車1台あたり、電気自動車が1.9台と逆転した。

 

*1ここでは、NEDCモードでないWLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)モードでデータを発表しているデンマーク、ポルトガル、フィンランドは比較できないことから、除外されている

 

欧州で販売台数の多い上位20メーカーの中でも、二酸化炭素排出量の平均値が一番少ないのはトヨタである。それに加え、2018年比で最も排出量を減らしているのもトヨタで、平均値で2.3 g/km減を記録した。この成功には、2019年に同メーカー販売の60%を占めた、ハイブリッドモデルの人気によるところが大きい。Munozは「電気自動車を投入していないにも関わらず、欧州メーカーよりも良い結果を残していることを考えると、トヨタはとりわけ適切な成功例である。欧州勢は、電動化計画で目指しているだけのモデル数を、いまだに提供できていない」と述べた。

欧州18カ国の二酸化炭素排出量の加重平均値 メイク別ランキング

グループ別のランキングで見ても、テスラを除けばトヨタが首位である。レクサスブランドも合わせて、2019年の二酸化炭素排出量の平均値は99.0 g/kmであり、その次に位置するグループPSAよりも14.3 g/km少ない。市場全体の平均値である121.8 g/kmよりも少ない値となったのは、ニッサングループ、ルノーグループ、三菱、スズキである。欧州最大のメーカーであるフォルクスワーゲングループは、123.6 g/kmであった。 

 

シトロエンの結果も特筆すべきものである。二酸化炭素排出量の平均値がメーカー別で2番目に少ない結果となっただけでなく、前年からの削減量でも2位となった。しかしながら、トヨタとは対照的に、電動化によるものではなく、ガソリンエンジンの効率改善によるものである。事実、コンパクトSUVモデルのC5 エアクロスが投入されて増えた排出量は、C35.1 g/km), C3 エアクロス(4.7 g/km), C14.5 g/km)のガソリンエンジンが改良されたことによってかき消された。

 

昨年、欧州市場での販売台数を増やし、利益を生み出すという意味において、SUVは最高の成長の原動力であった。その流行と、昔から人気のあるボディタイプと共有している開発コストのおかげもあり、多くの自動車メーカーが売上高を増やし、利益率を上昇させることに成功している。しかしながら、SUV人気が二酸化炭素排出量に悪い影響を与えており、特にセグメント別で比較したときには顕著となった。 

 

SUVの二酸化炭素排出量の平均値は131.5 g/kmであり、これはシティーカー(107.7 g/km)、サブコンパクトカー(109.2 g/km)、コンパクトカー(115.3 g/km)、ミッドサイズカー(117.9 g/km)、エグゼクティブカー(131 g/km)よりも多かった。これに加えて、SUVは、欧州18カ国の市場全体の38%を占めている。Munozは「SUVセグメントへは、早急に電動化モデルを増やす必要がある。これまでのところ、電動車の選択肢は、ハッチバックやセダンが多く、SUVにはごく限られた数しかない。もし今後もSUVの人気を継続させつつ、排出量による処罰を避けたいのであれば、電動化は必須である」と強調した。

Download file: CO2-Europe-2019-Release-JP.pdf